良寛は寒い土地に住んでいました。寒かった冬が終わりを告げ、ようやく春を迎えようとしたとき、友人から真心のこもった手紙が届いたのです。それは、雪国で暮らす自分の身をたいそうに案じてくれたものでした。良寛はその気遣いを喜び、「自分は幸せだ。友人の真心は、お金では買うことはできない」と思ったのです。転じて、この言葉は、幸福感が味わえる要素は、遠いどこかにあるのではなく、身近に存在するということを表しています。お金持ちになって、豪華な家に住んだり、高価なものを所有することだけが、ありがたく、うれしいことではありません。気の置けない友達と会って、食事をしながら、近況を語り合う。食事も贅沢なコース料理ではなく、自分も友達も大好きな家庭的な料理にする。こうした誰もが日々体験するであろう些細なことや、ありきたりの中に、ありがたく、うれしい「幸福の要素」はちりばめられているのです。大切なのは、そのことに気付けるかどうかなのです。