エレベータの保守会社や管理会社は、「安全性を考えると、エレベータの保守は重要です」と言ってきます。まるで水戸黄門の印籠のように「安全性」と揚げられると、何やら不安にさせられますが、日本のエレベータのというのは実によくできています。エレベータの仕組みは極めてシンプルです。いくつかの方式はありますが、およそ9割を占める「ロープ式」で説明すると、ロープの先にエレベータのかごと同じ重さの「釣合いおもり」がつるされていて、これを上に取り付けた滑車によって上下させるという単純な仕組みです。いわば井戸の釣瓶のようなものです。ロープは切れにくく作られており、それが3本ついているので、非常に丈夫ですし、万が一すべてのロープが切れてしまった場合でも、エレベータの両側にあるガイドレールにブレーキがついていて、自動的に止まるような安全策が講じられています。つまりエレベータは基本的にとても安全な乗り物なのです。日本初のエレベータは、1890年に浅草で設置されました。それ以降、日本における120年程の歴史の中で、エレベータによる死亡事故が起きたのは、2006年マンションで起きた高校生の事故と、2012年ホテルで起きた女性の清掃員の事故という、この2件のみです。いずれも事故が起きたのはシンドラー社製のエレベータでした。