至道無難は白隠の師にあたる江戸時代の名僧です。悟ったと思い込んで慢心していた白隠を厳しく指導し、正しい悟りに導いた人物としても知られています。その至道無難のいう「死人のように生きる」とは、どういうことでしょうか。死んだ人は、何かにこだわることはありません。見栄を張ったり、格好をつけたりもしません。恥ずかしがることもありません。つまり、自分を縛りつけるもの、すなわち、こだわり、見栄、羞恥心がすべて取り払われた状態のことを言うのです。例えば、ある人がある異性を恋焦がれていたとします。もし、何らかの理由で、その人に合えなくなってしまったら苦しみが始まり、時間とともにますます苦しくなる恐れもあります。しかし、その異性へのこだわりを捨て、好みの異性が他にもたくさんいると考えれば、苦しみはなくなります。苦しみが生じても、時間とともに薄れていくでしょう。「自分は学歴が高いから」「資格を持っているから」というプライドを持ちすぎている人も同じです。自意識過剰になって見栄を張り、気疲れをおこすことになります。見栄などを捨て、「自分はどこにでもいる普通の人間だ」と考えれば、気疲れをおこすこともありません。プライドが傷つくことも無くなります。