良寛は江戸時代の名僧で歌人です。自分の寺を持たず、人に法も説かず、子供と遊び、身分の分け隔てなく人と交わったことで知られています。その良寛にこんなエピソードがあります。ある大雨の日、一人の農民が良寛に、お布施代わりの野菜を届けにきました。すると良寛は外出する準備をしていました。「どこにお出かけになるのですか?」「山里に子供たちと、かくれんぼをしに行くのです」「こんな大雨の日に誰も来ませんよ。和尚様も取りやめた方がいいですよ」良寛は次のように答えました。「約束は、約束。私とかくれんぼをするのを楽しみにして、この大雨の中を待ってくれる子供がいるかもしれません。それを思うと、行かないわけにはいかないのです」本当に山里で子供がいたかどうかは、史料が無いためわかりませんが、こうした良寛の姿勢は人間関係にとっても大切です。相手が誰であっても、どんなに小さなことであっても、約束をしたことは必ず守るようにする。口にしたことは実行に移す。それが誠意のあらわれです。こちらの誠意は、相手からの信頼になります。