プロである設計事務所や管理会社から見れば、知識や知恵、経験の無いことに加えて、関心の薄い素人集団である管理組合は簡単に手玉にとれる相手だからです。発注者である管理組合が、談合やリベートがある、事実を問題視せず、工事そのものに満足するのであれば、すべてが丸く収まって、被害者は誰もいないことになります。厳しい言い方になりますが、管理組合がそういう「思うがままにできる発注者」であることが、談合が起こる最大の原因でもあります。管理組合が大規模修繕工事を行う場合、その工事費は区分所有者がコツコツと積み立ててきた修繕積立金が使われます。当然ながら、修繕積立金は区分所有者全員のお金です。100世帯のマンションならば100分の一が区分所有者一人のお金になります。長い間積み立ててきたのですから、100分の一といってもかなりまとまった金額になりますが、その現金をじかに見ることも無く、自分のお財布から直接お金が減るわけでもないので、いざ工事の支払いに使われることになっても当事者として実感がわきません「お金が出てく」という痛みを伴わないのです。そのために、区分所有者は修繕積立金に関心が薄く、設計事務所や工事業者が出してきた見積もりを吟味するという意識が薄くなりがちです。管理会社のみならず、設計事務所や工事業者にしてみれば隙だらけですから、いくらでも漬け込むことができるわけです。