大規模修繕工事においては、発注方式も選択のポイントになってきます。建設業界には「設計」と「施工」という二つの業務があります。この設計と施工を同時に発注することを「責任施工方式」と呼び、別々に発注することを「設計監理方式」と呼びます。「責任施工方式」は、主に管理会社に対してお願いするケースが多い方式です。管理会社に一言「お願いします」といえば、あっという間に調査補酷暑・企画書・見積書・総会議案書などが出てきます。ところが、責任施工方式の場合、正しく競争原理を働かせることはできません。時々3社の見積もりをとりました と言って私のところに持ってくる管理組合があります。実際にはその見積もりは管理会社が出してきたものですが、A社の見積もりには5000万、B社は8000万、C社は1億という金額です。見積もりの中身を詳しく見てみると、A社は屋上防水が入っていない、B社は屋上防水が「梅」プラン。C社は屋上防水が「松」プランとなっています。「どれがいいでしょう?」と聞かれたので、「こんな難しいことには答えられません」と申し上げました。簡単に言うと、この見積もりは車で例えるならば、200万円のフィット、400万円のプリウス、800万円のベンツを比較して優劣を決めるようなものです。比較対象が違いすぎて、検討することが非常に難しいのです。そこで、各社から見積もりが取れるように、その範囲と仕様を決めることを「設計」と呼びます。そしてそれを司る設計者のことを、業界では「大規模修繕工事コンサルタント」と呼んでいます。