Q 管理費を滞納している区分所有者に、再三、滞納分を支払うよう請求してきましたが、全く支払ってくれません。この区分所有者の氏名を掲示板などに掲示して支払いを促そうと考えていますが、
法律上問題はないのでしょうか?
A 法律上は、プライバシーの侵害、名誉棄損により管理組合が不法行為責任を負うかどうかが問題になります。管理費を滞納していることが真実であっても、氏名公表の経緯や態様により、
それが管理費等を督促する正当な管理行為を逸脱している場合には、管理組合が不法行為責任を負うことになります。
マンション管理委託契約上、「区分所有者は管理会社等が各種督促を行ったにもかかわらず、支払わなかった場合には、管理組合の指示で、滞納者の氏名を公表することができる」という規定がある場合が
あります。
このような管理規約があるとしても、区分所有者が管理費等を滞納している事実を公表すると、滞納者から管理組合に対して、プライバシーの侵害や、名誉棄損を理由に不法行為による損害賠償請求を
受けることがあります。
実際に、氏名の公表が問題になった裁判例には、「管理費等の滞納者の氏名を公表する立て看板を設置したとしても、立て看板の記載内容が虚偽ではなく、事前に総会の決議を経たうえで、
管理費納入の意思があれば公表を控える旨の通知をする等、立て看板設置の経緯、その文言、内容、設置状況、設置の動機、目的、設置する際にとられた手続きに照らし、正当な管理行為の範囲を著しく
逸脱したものとは言えない以上、本件立て看板設置行為は名誉棄損の不法行為を構成しない」旨判示したものがあります。